チャレンジ トピック

学生たちが「まち」に、来た~!

9月3日・日曜日の朝8時過ぎ、新札幌の「ふれあい広場」に学生たちが次々と集まってきました。 10時から始まる「子どもまつり」にボランティアとして参加するためです。「子どもまつり」は厚別区の子ども会の団体が毎年開いて来たイベントで、ことしで30回を数えます。ここ3年は新型コロナのため中止や規模縮小を余儀なくされ、屋外で大規模に開催されるのは4年ぶりです。会場には子どもたちに人気の遊びや食べ物の出店20店が設けられました。駆けつけてくれた学生ボランティアは11人。いずれも厚別区にある札幌学院大学と北星学園大学の学生です。学生たちは主催団体のスタッフに到着を報告し、交通費として1000円を受け取った後、4つのグループに分かれて、輪なげ、チョロQ、ヨーヨーすくい、スーパーボールすくいの出店を担当しました。

真夏のような太陽が照りつける中、優しいお兄さん、お姉さんたちの汗だくの奮闘が続きました。どんな動機で参加したのか聞いてみました。北星学園大1年の長田紗依(ながた・さえ)さんは「将来子どものために働きたいと考えているので、子どもとふれあう経験をしたいと思いました」。札幌学院大1年の河野英憲(こうの・ひでのり)さんは「いろんな人たちと知り合って、人脈や見識を広げたいと思って参加しました」。それぞれいろんな目的意識をもって参加していることがわかりました。

学生たちの出店の前には親子の列が

この学生ボランティア、実はことし7月からスタートした新しいシステムによって募集されたみなさんなんです。その名も「学まちネット」。町内会・自治会と、厚別区にある北星学園大学、札幌学院大学、札幌看護医療専門学校の3校、それに厚別区によるネットワークで、以下のような仕組みです。

①イベントなどへの学生の参加を希望する町内会などは、開催日の1か月前までに「希望シート」にイベントの概要や、学生に手伝ってもらう活動の内容、募集人数などを記入し、6つの地区ごとにある「まちづくりセンター」に提出する。

②「まちづくりセンター」はメールで「希望シート」を学校側と厚別区役所に送る。

③区役所は学生の応募フォームを作り、そのURLを学校側に通知する。

④学校側は、「希望シート」の内容と応募フォームのURLを、メールや学内のポータルサイトなどで学生に知らせる。

⑤ボランティアへの参加を希望する学生は、応募フォームにアクセスして応募する。

⑥厚別区は町内会などと学校側に、応募のあった学生の名前などを通知する。

町内会の希望シート(左)と学生の応募フォーム(右)

町内会では、住民・役員の高齢化でイベントなどの担い手が不足します。さらに新型コロナによるイベントの中止で担い手の引き継ぎが途切れ、廃止されたものや存続が危うくなっているイベントも出ています。そうした中、厚別区では北星学園大学に加え、おととし札幌学院大学と札幌看護医療専門学校の新キャンパスがオープンしました。いずれの学校でも、地域活動への参加を通して学生たちにさまざまな学びを体験させたい、学校としても地域との連携を図っていきたいと考えています。そこで、昨年度、町内会・自治会の連合会と、3学校、厚別区の三者が話し合いを重ね、厚別区が町内会側と学校側を仲介する形で学生に地域活動に参加してもらう「学まちネット」が誕生したわけです。

この日の「子どもまつり」には大勢の親子連れが訪れ、大盛況のうちに午後3時に終了しました。学生たちは、すぐに撤収作業に取りかかり、会場がきれいにかたづくまで手伝いました。前日の会場設営から参加した札幌学院大3年の川村優太(かわむら・ゆうた)さんは「裏方を初めてやりましたが、イベントはいろんな人たちの努力で成り立っているんだということがわかりました。またやりたいです」と話してくれました。「子どもまつり」の代表者で、厚別中央町内会連合会の会長として「学まちネット」の立ち上げにもかかわった田中昭夫(たなか・あきお)さんも「学生の参加で大いに助かりました。担い手不足でなくなりそうになっている地域のイベントも学生の参加で復活できればと思っています」と話していました。

厚別区によりますと、7月にスタートしてから9月3日までに、町内会など7つの団体から、夏祭りや子どものイベントなど7件について、合わせて133人の学生ボランティアの募集があり、のべ59人の学生が応募しました。厚別区地域振興課の古関仁(こせき・ひとし)さんは「町内会からの申し込みは予想以上でしたし、夏休み中にもかかわらず多くの学生が参加してくれました。順調な滑り出しとみています」と話しています。一方、学校側も、参加した学生たちに、参加動機や満足度、今後にどう生かしていくかなどについてアンケートを行っていて、今後の展開に期待を寄せています。

北星学園大学社会連携課の鹿熊裕志(かくま・ひろし)さん「今後は、学生がイベントの企画段階からかかわることも期待したいですね」。札幌学院大学社会連携課長の松本賢彦(まつもと・まさひこ)さん「将来的には大学の単位として認定していくことも検討していきたいと思っています」、札幌看護医療専門学校の下山記弘(しもやま・のりひろ)事務局長「単発の参加だけでなく、地域の人たちとの継続的な交流につながればと思っています」。

いずれの関係者も継続的に話し合いを持って検証し、「学まちネット」を大事に育てていきたいとしています。「厚別モデル」とも言えるこの取り組み、区内はもとより、他の地域からも注目を集めそうです。

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