カルチャー チャレンジ トピック

みんなが集まる子ども食堂

2024年10月16日(水) BiViパーク

【ゲストスピーカー】

星見優子さん もみじ台の子ども食堂「あじさい食堂」代表

米坂尚美さん 厚別中央の子ども食堂「もくきち」代表

司会:あつ!ベンチャー 山本健一

子ども食堂を始めた動機

あじさい食堂 星見優子さん

星見:食生活改善推進員として約30年間食育活動をして、75歳になり、役職を降りてフリーになった時に、今までやってきたことを何か生かせないかと思いました。中学校の評議員もやっていたので、朝食を食べないで登校する子、働くお母さんのもとで、一人で夕食を寂しく食べている子たちが少なからずいると聞いていました。子どもたちに安心して食べられる場所を提供できたらいいと思い、2018(平成30)年6月に始めました。あじさいの花は小さな花びらが集まって大きな一輪を作っていて、色も季節によって七色に変わります。そんな花をイメージして、子どもにお父さんお母さん、高齢者の方たちが集まって和やかにお食事できたらいいなあと考えて「あじさい食堂」という名前にしました。

もくきち 米坂尚美さん

米坂:私は当時小学生の子どもがいるお母さんの仲間で2016年に子ども食堂を始めました。学年も違ういろいろなお母さんや地域の方々、子どもたちと顔見知りになりたいという気持ちで始めました。力みもなく、やってみようかなぐらいの感じでした。1回目を開催したら、80人近くの子どもたちが集まって、これは求められているのかもと実感しました。メンバーのお母さん方と相談して、会場が木馬公園の目の前にあって、開催日も木曜日というところから、子どもたちの基地という意味で「もくきち」という名前にしました。

活動の状況

星見:「あじさい食堂」は、毎月第2と第4金曜日にもみじ台管理センターの会議室と実習室を借りて、夕方5時から7時まで開催しております。食堂を始めるときにもみじ台地区の社協の役員から、もみじ台は独居高齢者も多いので、そういう人たちも入れてもらえないかと話があって、高齢者も交えてやっていくことになりました。40人ぐらいでスタートしたんですが、大変増えて、今110人から120人ぐらいの人たちが参加してくださっています。学生、子どもたちは無料で、保護者と高齢者からは300円いただいています。高齢者の方たちは5時になったら行列して受付に並んでいて、会場がいっぱいになります。5時半、6時ぐらいになると、仕事から帰ったお母さんが子どもを連れて来る。6時過ぎたら中学生が部活の帰りに来るので、スタッフはどんぶりを用意しています。ごはんとお味噌汁はおかわり自由にしているんで、どんぶり3杯ぐらい食べるんです。食べないときは「どうしたの、体調悪いんでないの」と聞くぐらいで、元気に食べてくれるんで本当にうれしいです。

スタッフは全員高齢者で、半分は後期高齢者です。1日7・8時間労働になりますけど、仲良くがんばっています。12月6日のメニューのうち、コロッケは厚別東にあるサンマルコ食品さんからのご提供です。野菜は、畑で作ったものを保存しておいて使います。どうしてもないものはお店で買いますが、できるだけあるものを使います。ある材料を見て献立を決めます。普通はマーボー豆腐なんですけども、この時はマーボー大根です。大根は畑で作ったもので、ひと冬使えるように保存しています。ニンジンや小松菜も畑で収穫したものです。

野菜を作っている畑は、立命館慶祥高校に行く途中にある貸し農園の2区画、500平方メートルほどを借りています。大根、ニンジン、ジャガイモ、トマト、キュウリ、白菜、ほうれん草とか30種類ぐらい作っています。家庭菜園より何倍も広いんです。お天気が続くと水が心配になります。水道水を運んでいたら水道代が高くなるので、家の屋根から雨水が一番落ちるところに大きい樽を置いて雨水を貯めて、ペットボトルを何十本も集めてそれに詰めて主人の車で運んで撒いています。水を運ぶのは大変ですけれども、畑仕事が楽しくて、多いときは週に4・5日は畑に行きますね。

収穫したものは車庫で保存しています。夏の間、車は外に出しっぱなしです。小豆は干しておいて、今月末の子ども食堂でお餅を作る時に、あんこにしようと思っています。家の中は、恥ずかしいんですけど、一部屋まるまる物置になっております。借りている子ども食堂の会場には食材や調理器具を置く場所がないので、開催日に必要なものを持ち出して主人の車で2回ぐらい往復して運んでおります。野菜以外で保存してある食材は、企業やフードバンクから提供してもらったものです。冷凍できるものは、子ども食堂のために買った冷凍庫に全部保存しています。献立も一日がかりで考えたりしますし、生活が子ども食堂中心に動いている感じです。

米坂:たまたま私が自宅の隣の住宅を買い取ったばかりだったので、この家を使って食堂をやろうということになりました。家はかなり傷んでいたので、自己資金でリフォームをしました。その後、市のまちづくり支援事業の補助を受けて、再度キッチン中心にリフォームしました。1階はキッチンと食事をするスペース。キッチンは飲食店の調理場並みの設備を整えることができました。2階は子どもたちが遊ぶスペースにしました。

食事を作るボランティアスタッフは10名。9年前の2016年に始めたときはみんな小学生や中学生のお母さんでしたが、今は子どもも卒業したので、みんなPTAのOGです。子ども食堂は毎月第4木曜日に開催しています。利用しているのは小学生がメインで、定員は30人。信濃小学校を通じて毎月開催案内を配って、参加の申し込みはショートメールで受け付けています。利用料はおやつと食事で1人300円。未就園児は無料としています。子どもたちは2時半頃からやってきます。まず目の前の木馬公園や2階の部屋でボランティアの学生さんたちと遊んでもらったりします。スタッフは当日の午後1時ぐらいに集合して、まず3時のおやつの準備をして、終わると夕食作りをします。

11月28日は、料理上手なお母さんが、バナナやきなこなど4種類のパウンドケーキを作ってきてくれて、1人2種類ずつ選んで食べてもらいました。この日の夕食は親子丼と味噌汁、それにかぼちゃ、さつまいもの素揚げでした。お米はJAに協賛してもらっていますが、それ以外のものはほぼスーパーで購入しています。夕食は5時からです。おやつや食事は部屋の広さの関係で、2回に分けて提供しています。共働きが増えている中、家に帰っても寂しいなあ、話し相手がほしいなあ、みんなともっと遊びたいなあという子が少なくありません。「もくきち」では食事を提供することはもちろん、一緒に遊んだり、話を聞いてあげたり、体を動かしてもらったりしています。お腹がすくとみんないっぱい食べてくれます。子どもたちが楽しいなあ、うれしいなあと思ったりするコミュニケーションの場として頑張っています。6時には保護者の方に迎えに来てもらっています。

ボランティアの学生を集めるのには、学生を募集して地域の活動に参加してもらう厚別区の「学まちネット」を利用しています。毎月7・8人ぐらいを募集しています。多くは近くの北星学園大学や札幌学院大学の学生さんたちですが、ときどき近くの北辰病院の札医大の研修医さんなどにも来てもらっています。子どもたちは、木馬公園でシーソーで遊んでもらったり、悩みを学生さんに聞いてもらったりしています。食堂の2階では、学生さんがボードゲームで遊んでくれたり、宿題の面倒をみてくれたりします。かけっこをしたり、シーソーを何回もやったり、ブランコを何回も押したりとか、子どもと遊ぶのにはとても体力が要るので、学生さんが協力してくれて本当に助かっています。学生さんを募集すると、いつも定員がすぐにいっぱいになってしまいます。学生さんたちからも、子どもと関わったり、遊んだりするのが楽しいと聞いています。中には将来子どもに関わる仕事をしたいという学生もいるようです。学生さんとの交流が「もくきち」の魅力になっているのかもしれないです。

新型コロナの時の対応

米坂:2020年3月から食堂は中止しました。ただ、七夕やハロウィンなど野外で行える行事はやらせていただきました。2022年の4月からコロナ対策を十分にしながら開催をスタートさせました。

星見:会場の管理センターがすぐ閉鎖になったので、私どももお休みになりました。ところが、学校が休みになったので、お母さんたちが仕事に行っている間、お昼はどうしてるんだろうと心配になって、チャーハンやパスタ、おむすびとかを作って子どもたちに届けたりしたんです。そうしたらボクもほしい、私もほしいと。最初は自宅で作って管理センターまで子どもたちに取りに来てもらっていましたが、希望者が増えて賄いきれなくなりました。札幌市にお願いしたら、調理室だけなら使ってもいいと許可をいただき、スタッフみんなでお弁当を作り、100円弁当と称して子どもたち配ったんです。130食限定で3年間100円弁当を配りました。そして去年の4月から食堂を再開しました。

地域の支援態勢

もくきちのクリスマスパーティー

米坂:これは先月クリスマスパーティーの写真です。とっても大勢の親子で賑わいました。前日から会場の飾り付けをして、当日は学生さん、親父の会、町内会の役員さんが手伝いに来てくれました。子どもたちからは300円の会費をもらいましたが、町内会や社会福祉法人のエポックさんなどの寄付があったので、豪華なプレゼントを用意できました。着ぐるみに入ってくれたのは、親父の会と町内会の役員さんです。以前は、運営資金も足りないし、スタッフも足りないし、本当に困っていました。でも、今は町内会の全面的な支援があるほか、赤い羽根共同募金や、さっぽろサポートさん、労働金庫さんから寄付をいただいたりして、必要な資金を賄えています。年間50万円ぐらい必要なんですが、みなさんの寄付のおかげで活動できるようになりました。町内会のバックアップというのは絶大で、町内会さんが協力してくれているからこそ活動が継続できています。

あじさい食堂のクリスマスパーティー 下段はネッツトヨタ道都のみなさん

星見:うちもスタートするときには、地域のみなさんに賛助金を呼びかけ、ある程度集まりました。でも、そういうものはいつでも入ってくる訳ではないので、お金をなるべく使わないで、提供していただいた食材をできるだけ使うようにしています。うちは人数が多いので年間80万円ぐらい経費かかります。地域のみなさんからの賛助金をまちづくりセンターが窓口になって集めてくださいます。あと、厚別区内のサンマルコ食品さんや弁釜さん、厚別南の社会福祉法人などから食材やお菓子を提供してもらっています。

ネッツトヨタ道都さんにはクリスマスパーティーを支援していただいています。今回で3回目です。社員さんみんなのカンパを届けてくださるんです。それで子どもたちにケーキも提供しています。ネッツさんの若い方たちが飾り付けをしてくださったんです。社長さん、専務さんもおいでになり、会社ぐるみで応援してくださいました。

広がる交流

星見:高齢者の人たちの中には毎回グループで集まって例会のように楽しそうに和やかに夕食を食べていただいている方たちもいます。お母さん仕事が忙しくて1人で来た子どもと、他の家族が一緒に食べることもあって、交流がうまくいっているのかなあと思います。

米坂:子ども食堂を始めたことで、町内会の役員さんや、他の活動をしている団体の方など、本当にたくさんの方と知り合うことができたと思います。もしこの活動をしていなければ同年代のお母さん方などとしかめぐり会えなかったと思います。

今後の課題

星見:うちも以前は、会場の後ろの方にじゅうたんを敷いて、学生さんたちが子どもたちと遊んでくれたりしていたんです。でも、参加者が急増したので、テーブルでいっぱいになり、遊ぶ場所がなくなりました。会場を大きいところにすると会場代も高くなるので、札幌市が会場代をみてくれたらありがたいなあと感じています。そうすればまた若い人たちが来て子どもたちと遊んでもらえるでしょう。それから、今、高齢者の参加希望が増えてお断りしている状態です。一人親で頑張っているお母さんがたくさんいるし、子ども優先で行きたいと思っています。一人親家庭には四半期ごとに食材やおかしを配っていて、頑張っているお母さんを応援していきたいなあと考えています。高齢部隊なので、若い人に入ってもらって譲っていけるような態勢をとって行けたらなあと考えております。

米坂:以前は人もお金も足りなくて、本当に大変だったんですが、現在は資金問題も解決して、大きな課題というものはないです。支援が整うのに7年近くかかりました。ただ、他の子ども食堂からは、資金問題や人手不足、高齢でいろんなことができにくくなったという話を聞きます。子どもたちを地域で見守って育てていくという考え方が広まって、他の地域でも子ども食堂を支援する態勢が整っていけばいいと思っています。「もくきち」も町内会や他の団体と一層連携を取っていろんな活動をして行ければと思っています。

【質疑・意見】

宮川智嘉さん(「もくきち」のある町内会の総務部長)

私は町内会の役員もやっていますけど、子ども食堂のメンバーでもあります。町内会では「もくきち」など地域のいろんな団体に助成金を年間数十万ずつお出ししています。逆に町内会の活動に子ども食堂のお母さん方にも参加していただいています。町内会では毎年盆踊り大会を木馬公園でやっています。役員が出店を出すんですが、そこに子ども食堂のお母さん方にも参加していただいています。町内会は高齢化が進んで参加者も限られてきている中で、若いお母さんに参加していただくことによって町内会も活性化していく。お互いウィンウィンな関係になっています。

山本:「あじさい食堂」はもみじ台管理センターの会議室をその都度借りて開催していらっしゃるから、食材は星見さんの家の冷蔵庫に入れておかなければならないし、道具も持ち込まなければならないわけですね。でも、みんなが星見さんのようにはできないのではと思うんですけど。

星見:若い方に引き継げたらいいと思っているんですけど、その辺が一番問題なんです。「もくきち」さんの話を聞いていて、町内ぐるみで活動されているというのはとてもは羨ましいと思いました。

山本:札幌市によると、厚別区内には6つ子ども食堂があるということですが、他の子ども食堂はどうやっているのか、お話を聞いてみたいと思いました。それに、子ども食堂は子どもに食事を提供するところというだけではなく、子はかすがいといいますか、地域のかすがいにもなりつつあると感じました。きょうはありがとうございました。

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