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地域に響け~青葉中学校合唱部 春のコンサート~

3月29日、青葉中学校の体育館は400人を超える人たちでいっぱいになりました。合唱部が春のコンサートが開いたからです。コンサートは、3年生の卒業を祝い1年を締めくくるとともに、地域への感謝を込めて、この10年、新型コロナの時期を除いて毎年開かれてきました。

合唱部員は卒業する3年生8人を含めて17人。決して多くはありませんが、去年のNコン(NHK全国学校音楽コンクール)では道央地区大会で銅賞を獲得しました。体育館の入り口近くには、合唱部が近年獲得した賞状やトロフィーなどがいくつも飾られています。

そんな合唱部を率いて来たのが、佐藤真弓(さとう・まゆみ)先生です。「厳しいけど温かい」「生徒との距離が近い」ということで、親しみを込めて「真弓先生」と呼ばれています。真弓先生がコンクールとともに力を入れてきたのが、地域との連携です。

上のチラシは、去年6月地元町内会が開いた青葉中合唱部のミニコンサートのものです。「中学生と一緒に歌ってみませんか」と来場を呼びかけていて、近しい関係がうかがえます。2024年度、厚別区内のイベントで合唱を披露するのは今回が8回目でした。夏に中学校で開かれる「青葉の森音楽会」は、青葉町自治連合会などが資金面でも支援しています。連合会の土田義也(つちだ・よしや)会長も「青葉中合唱部とはとてもいい関係で、なくてはならない存在です」と話しています。ただ残念ながら真弓先生は4月から白石区の中学校に転任することになっていました。「10年間お世話になった地域のみなさんに感謝を込めて一生懸命やります」。真弓先生も生徒たちも特別な思いで臨んだ最後のコンサートでした。

「重たい重たい。もっとあっさり、すーっと歌って」。真弓先生のよく通る声が音楽室に響き渡ります。コンサートの3日前、学校を訪ねると、朝から練習が行われていました。3月に入ってからは、高校入試や卒業式などの合間を縫って毎日のように練習してきたといいます。この日も、一つのフレーズを10回も20回も繰り返し練習していました。

そうかと思うと、アニメソング・メドレーの練習では、先生も生徒も一緒になってウルトラマンのポーズや仮面ライダーのキックを繰り出します。「間違っても笑ってごまかして」というありがたいアドバイスもありました。幕間に披露するコントの稽古では1年生コンビがひょうきんな演技を見せ、教室は笑い声に包まれました。真弓先生に「指導で大切にしていることは?」と伺うと、「とにかく楽しく歌うこと。でもそのためには厳しい練習があるんですけどね」という答えが返ってきました。言葉どおりの練習だなあと思いました。

コンサート当日、会場の体育館には400席近い椅子が並べられていました。これだけの席が本当に埋まるんだろうか思いきや、午後1時の開場と同時に地域の人たちが続々と詰めかけ、席を増やす事態となりました。聞けば、青葉地区の町内会ではコンサートのチラシが回覧板で回されたとのこと。さすが地域密着の底力です。

午後1時半、窓から春の日差しが降り注ぐ中、コンサートは中学校の校歌で始まりました。続いて披露されたのは2024年度のNコンの課題曲「ぼくらはいきものだから」。歌いに歌い込んだ思い出の曲です。若々しい、まっすぐな歌声が心に染み入ります。

左が長倉駿さん

続いては、青葉中学校OBの声楽家2人によるカンツォーネでした。このうち長倉駿(ながくら・しゅん)さんは、4月から新国立劇場のオペラ研修所に第28期の研修生として入所することになっていました。真弓先生が青葉中学校にやってきた時の1年生です。学校祭で合唱部の歌を聞いて感動して入部したといいます。「先生との出会いが一番大きなターニングポイントでした。地域を愛し愛されという感じで、自分には帰って来る場所があると感じます」と話してくれました。コンサートには、2人の他にも、多くのOB・OGが駆けつけ、プログラム後半の合唱に加わりました。コンサートは同窓会でもあったんです。

アニメソングや昭和歌謡のメドレーは大受けでした。「北酒場」「時の流れに身をまかせ」などに続き、「マツケンサンバ」では、生徒たちが手づくりのサンバ棒を手に踊りも披露しました。コントの熱演に加え、会場の子どもたちに指揮に挑戦してもらうアトラクションもあり、会場は笑いの渦に包まれました。この他、厚別を中心に活動する「新札幌弦楽合奏団 アンサンブル弓(きゅう)」の寸劇付きの演奏もあり、全体を通じて、地域の人たちと一緒に音楽を楽しもうという強い思いが感じられました。最後は、OB・OGをはじめ、在校生も加わり、卒業する部長の和田淳平(わだ・じゅんぺい)さんの指揮で「大地讃頌」を大合唱し、2時間余りにわたるコンサートは大団円を迎えました。

右の写真は和田淳平さん

訪れた人たちに話を聞くと、「振り付けもあったし、知ってる曲もやってくれて楽しかったです」(50代女性)、「毎年楽しみに来ています。子どもたちの元気な声で桜が咲いたぐらい気持ちが晴れました」(70代女性)と、大満足のようすでした。ステージに立ったみなさんも「こんなにたくさんの人たちが来てくれてうれしかった」(1年の女子部員)「緊張はしたけど楽しくやれました。真弓先生、ありがとうございました」(部長の和田さん)、「久々だったけど、やっぱり歌うのはいいなあと思いました。これも地域の人たちの応援があってこそですね」(OGでこの春大学を卒業した新矢萌香さん)と、感動覚めやらぬ思いを話してくれました。真弓先生は生徒から大きな花束を贈られ、別れを惜しむ卒業生や地域の人たちに代わる代わる囲まれていました。「お疲れ様でした」と声をかけると「みんな楽しくやってくれてよかった。これからもみんなに応援される生徒、部活であってほしいですね」とすがすがし表情でした。

真弓先生、これからもお元気で。合唱部のみなさん、来年以降もこのコンサート、続けてください。楽しみにしてまーす。

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