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見て 触れて 考える?~札幌市青少年科学館の取り組み~

2024年7月17日(水) BiViパーク

【ゲストスピーカー】石丸和正(いしまる・かずまさ)さん

1977年生まれ。札幌市青少年科学館学芸課展示係長。展示物の維持管理や、サイエンスショー、実験教室、特別展の企画運営などを担当。厚別区在住。

科学館ってどんなんところ

科学館職員はみんな理系で、実験や工作に長けているというイメージがあるかと思いますが、実際は半分ぐらいが文系出身です。現役の学校の先生や、校長のOBもいます。理系じゃなくて自分もわからないからやさしく教えることができるということもあるかと思います。

科学館には、管理係、展示係、天文係という3つの係があります。管理係は、受付や予約などを、展示係は展示や実験などを、天文係はプラネタリウムや天体観望を担当しています。先日オーロラを撮影するために、夕方に札幌から増毛まで行って撮影してきた職員もいます。

科学館は1981(昭和56)年10月に開館しました。翌年にはサンピアザ水族館や地下鉄新さっぽろ駅が開業しています。ことしで44歳になります。1997(平成9)年に第2期整備工事が行われ、増築しました。1999年(平成11)年に管理運営が札幌市から札幌市生涯学習振興財団に移行されました。2005(平成17)年にプラネタリウムの1回目のリニューアル、2016(平成28)年にプラネタリウム2回目のリニューアル、そして、ことし展示室がリニューアルしました。展示室のコーナーごとのリニューアルはたびたびやっていましたが、今回のような大規模リニューアルは初めてです。リニューアル自体は札幌市教育員会が行いましたが、私たち財団も長い運営経験からくる知見に基づいて、教育委員会にアドバイスを伝えました。

リニューアル前

来館者数はと聞かれたときは37万人とお答えしています。デコボコはありますが、35万人から40万人で推移しています。新型コロナの影響で令和元年以降少なくなっていましたが、ことしは7月時点で20万人位が来られていて、リニューアル前の年間入場者の半分を超えています。

大規模リニューアル

2017年に既存展示物について、壊れていないかどうか、壊れているのなら直すのに費用がどれぐらいかかるかなど、一件一件洗い出しました。展示物の老朽化がわかったのを受けて、科学館活用の基本構想が札幌市によって作られ、2021年には基本設計が作られました。2022年8月に休館し、ことし4月1日にリニューアルオープンしました。電気関係や空調、エレベーターをはじめ、2階と3階の展示物が更新されました。展示物のうち、一部使えるものは残しました。多少メンテナンスをすれば使えるものは、道内の科学館に声をかけ、多くの展示物を譲渡することができました。1953年から65年まで利用されていた国際線の航空機のコックピットとヘリコプターのぎんれい号は歴史的な価値があるということで、埼玉県にある所沢航空発祥記念館に譲渡しました。このヘリコプターは川崎航空機の4人乗りで、北海道警警察が最初に取得し、「ぎんれい1号」の愛称で1963年から79年まで患者の輸送や空のパトロールに使われたものです。

リニューアルでは「当たり前の皮を突き破り、新しい学びの力を育む科学館」というコンセプトで展示物が作られました。毎週、札幌市教育委員会と展示物製作業者とのZOOMの打ち合わせに、科学館も参加しました。本州にある展示物の工場にも視察に行き、改善すべきところをアドバイスしながら進めていきました。電気設備や空調機器の工事が終わった後、2023年9月から展示物の設置工事が始まりました。

展示物は、同じ原理で作られた似たようなものは他にもあると思いますが、基本的には一点一点オーダーメイドです。以前は約200種類でしたが、リニューアルで約110種類になりました。2階が天文・地球科学エリア、雪・氷エリア、環境・気象エリア、3階がボディーアドベンチャー、サイエンスパーク、札幌の現場で働く乗り物を体験できるサッポロバックステージとなっています。新しい展示物には、センサーや映像を使ったものが多くなっています。雪・氷エリアの大きなドームでは、センサーを使って来場者の体をセンシングして、映像を映し出す技術が使われています。

カーリングのシミュレーション体験ができるコーナーでは、ブラシに振動センサーが付いていて、こする回数を計測してストーンがどれぐらい進むかを決め、映像に反映しています。環境・気象エリアでは、砂を触って形を変えると、上から砂の高さを計測して映像(プロジェクションマッピング)で山や川を作り出すコーナーもあります。3階の地下鉄の運転コーナーでは、リニューアルで映像を付け加え、実際に運転しているようなシミュレーション体験ができます。車両のタイヤの回転数をセンサーでカウントして、うまく止めることができたかを判定します。今回のリニューアルで拡充されたのが雪・氷エリアです。雪は白いというイメージがありますが、ミクロ的に見ると透明なんです。そういうことがわかる展示物もあります。

展示物以外にも、事前予約制やオンライン決済、プラネタリウムの年間パスポートなどを導入し、科学館をより利用しやすくしました。

特別展の企画

特別展のテーマを決めるのは1年から1年半前になります。他施設の動向、時代的な背景、子どもたちの好みなども考えて決めています。パッケージされていて、全国の科学館・博物館を回る巡回展もあります。例えばポケモン化石博物館などがあります。巡回展はできあがったものなのでスムーズに準備が進みます。これとは別にテーマを自分たちで考えるオリジナル展もあります。一から自分たちで考えるので産みの苦しみがありますが、科学館職員の腕の見せ所となるので、やりがいがとてもあります。特別展に合わせて行うサイエンスショーの検討なども同時に進めていきます。ことしの夏は科学捜査展を開きます。一部の展示は借りたものですが、自分たちで作れるものは作って展示しようと思っています。毛髪の鑑定や足跡から犯人を割り出す展示もあります。是非ご覧ください。サイエンスショーも、見ている人の予想を裏切る、科学的な説明ができる、できれば日常生活の中で活用できるようにと、考えています。

地域との連携

出前講座

休館中は、市内の小学校や幼稚園に出前してやることを主軸に考えました。小学校154校で、移動プラネタリウムや、天文授業を実施しました。幼稚園では60施設で大きな段ボールから空気砲を撃ったり、熱気球を飛ばしたりするサイエンスショーを実施しました。大学や博物館、商業施設でも講演やサイエンスショーを行いました。リニューアルした後は、科学館の運営もありますが、できる限り協力したいと思っています。

科学館のファンの中には、ほぼ毎週いらっしゃる方もいますし、石の好きな子どもから、自分の採取した石がどのようなものなのかとメールで問い合わせて来て、何度かやり取りしたりもしています。今後もおもしろい企画を考え、みなさんとつながって楽しい科学館を作っていきたいと思います。

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