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驚きのパソコン教室

「もみじ台パソコン教室」は、地域の真ん中にある集会施設「もみじ台管理センター」で毎週火曜日の午後に開かれています。もみじ台地区の「福祉のまち推進センター」が高齢者福祉の一環として、2004年に開設し、もう20年になります。現在の受講生は40代から80代までの男女10人。一見、中高年の人たちのための普通のパソコン教室のようですが、「えっ、そうなんですか?!」と聞き返したくなるような驚きがいっぱいあるんです。

私が取材にお邪魔したのは4月2日。受講生たちがパソコンを持って次々と集まり、午後1時から授業が始まりました。授業は前半と後半に分かれていて、全部で3時間あります。前半の1時間半はみんな同じテーマで授業を受けます。この日のテーマは写真の加工。JTrim(ジェイトリム)という無料ソフトを使って、写真の明るさを変える方法や、写真をメールで送ったりしやすくするために画素数を小さくする方法、それに必要な部分だけを切り取るトリミングなどを学びました。ことしはこれまでにメールの送り方や、USBメモリーの使い方、Excelの使い方などを学んでいます。充実した内容ですが、これが全部無料というからびっくりです。

齊藤正五さん

この教室が無料なのは、講師が無償で授業を行っているからです。その講師、齊藤正五さん(86)です。齊藤さんは元々大手家電ブランドのアフターサービスの技術者で、パソコンをどう業務に活用してくかにも取り組んでいました。退職後の2000年、62歳の時に、「同年代の人たちにも気軽にパソコンを使えるようになってほしい」と、中高年にパソコンを指導する「シニア情報生活アドバイザー」の資格を取得(経済産業省の外郭団体「ニューメディア開発協会」が認定)。仲間とこの資格の養成講座も立ち上げました。そして2004年に、もみじ台にパソコン教室が開設されるとすぐに講師を引き受け、以来20年にわたってボランティアで指導に当たって来ました。まさに「パソコンの伝道師」とも言うべき人なんです。

授業では、齊藤さんが自身のパソコン画面をスクリーンに映し出し、操作の手順をひとつひとつ説明していきます。受講生の理解するスピードに合わせ、急かしたり、置いてきぼりにしたりはしません。「みんなができるまで待つ」というのが齊藤さんのポリシーです。「受講生が「できた!」と喜ぶ姿が自分の喜びでもあります。有料の教室だと、受講者の理解よりもカリキュラムの消化が優先されがちです。じっくりできるのは無料のいいところです」と言います。

その丁寧な授業を支えているのが、受講生の後ろに立ち、アドバイスをしてくれるボランティアのサポート講師です。この日も4人の女性が指導に当たっていました。10人の受講生に対して、齊藤さんも含めて教える側が5人。手厚いですよね。受講生が戸惑っていると、サポート講師がすぐに画面を指さし、懇切丁寧に教えてくれます。その一人、野島比呂子さんは去年の春は受講生でした。メキメキ上達して、秋からは「シニア情報生活アドバイザー」の養成講座に通って資格を取り、ことし1月からはサポート講師として活躍しています。野島さんは「教えていると気づきがあって、自分の勉強になるんです」と話してくれました。4人のサポート講師のうち3人は野島さんと同じように、この教室の卒業生だということでした。受講生がレベルアップして、後輩たちに教える。ん~、なんという好循環!。

さて、午後2時半からの後半はフリータイム。各人がパソコンを使ってやりたいことに取り組みます。作ったジャムを友だちにあげたいという女性は、ジャムの瓶に貼るイラスト入りのラベルを作っていました。社交ダンスの先生は、踊りのステップの順番を書いた表を作っていました。生徒に配るためとのことでした。やり方がわからない時はサポート講師がすぐに教えてくれます。家でパソコンを使っていて、わからなかったことを聞いてもいいし、トラブルの相談にも応じてくれます。「こんなことを聞いたら恥ずかしい」といった気遣いは無用です。受講生の青木きよみさん(85)は「エクセルが使えるようになって、カレンダーや体重の記録表、家計簿を作って使っています。もっともっと学んでいきたいですね」と弾む声で話してくれました。平工剛郎(ひらくたけお 86)さんも「1回では覚えられないので継続してやっています。無料で親切、丁寧。最高です」と話していました。このようにとても好評なため、継続して受講する人が多く、10人の定員になかなか空きが出ません。それが受講希望者にとっては唯一の難点のようです。

ジャムのラベルとステップのリスト

「もみじ台パソコン教室」のホームページには、2004年に開設されて以来の卒業生たちの記念写真が掲載されています。これだけ多くの人たちがパソコンやインターネットという新しい世界を手に入れたのか。写真を見ていると、教室の果たしてきた役割の大きさを実感します。受講生からサポート講師になった西川玲子さんは齊藤さんについて「ボランティア精神で取り組む姿は年齢を感じさせません。教え方だけでなく、生き方も学んでいます」と話しています。今後は後継者の育成にも力を入れていくという齊藤さん。ますますの活躍を「あつ!ベンチャー」も応援しています。

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