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「原始林通」のポテンシャル

 「厚別原始林通」の消印。妻が最寄りの郵便局から静岡県の友達にゆうパックを出したところ、これと同じ消印が押されて届きました。その友達から、驚きの電話がかかってきました。「一体どんなところに住んでいるの?」妻は友達の質問の意味がとっさにはわからず、戸惑ったといいます。

「厚別区ガイド」より引用

 「原始林通」は地図にあるように、地下鉄「新さっぽろ駅」の7番出口付近の交差点から、かつて野幌原始林と呼ばれた野幌森林公園に向かって真っすぐのびる市道です。ほどよいアップダウンが街並みにリズムを作り出していて、途中の野津幌川(のっぽろがわ)の緑豊かな眺めは郊外ならではのゆったりした時間を感じさせてくれます。野幌森林公園をお社に見立てると、参道のような雰囲気も感じられます。「原始林通」は通称、愛称ではありません。「南郷通」や「厚別中央通」などと同じく、都市計画法に基づく主要な道路「都市計画道路」としての正式名称です。全長1370m。1986年度(昭和61)に完成しました。

 この道路に「原始林通」という大胆な名前が付けられたのは、都市計画道路に決まった1968(昭43)年、完成の18年も前のことです。この年の5月には、野幌原始林と呼ばれていた国有林などが「道立自然公園 野幌森林公園」に指定されました。11月には北海道百年記念塔と北海道開拓記念館(現・北海道博物館)が着工。公園としての整備が本格的に動き出し、「原始林」に大きな注目が集まっていました。

 また、札幌市交通計画課によりますと、当初の計画では、もみじ台通が今の小野幌川(おのっぽろがわ)のあたりを通ることになっていて、「原始林通」もそこまで、つまり原始林のすぐ手前までのびることになっていました。脚光を浴びていた「原始林」まで一直線にのびる道だったわけですから、「原始林通」と命名されたのも自然な流れだったのかもしれません。

 冒頭にご紹介した消印の主、厚別原始林通郵便局が開局したのは、原始林通が完成した直後の1987年(昭和62)12月です。厚別東にあるので「厚別東郵便局」というのが順当な名前でしたが、あいにく「厚別東郵便局」は既に存在していました。今の「厚別信濃郵便局」が当時は「厚別東郵便局」を名乗っていたんです(2015年(平成27)に厚別信濃郵便局に改称)。このため、ちょうど開通したばかりの通りの名前を付けたのです。おかげで、あのインパクトのある消印が誕生したわけです。

 局長の末廣紀久代さんに局名の評判について伺ってみました。「郵便局長の全国的な会議に出席した時に参加者と名刺を交換すると、「どんなところにあるんですか」とか「札幌なのに山奥にあるんですか」って、びっくりされます。自然豊かな北海道のイメージがあるので、みんな本当にすごいところにあるんだろうって思うようなんです。」やっぱり大うけするんだ!道内より、むしろ道外で!

 ところがです。この通りの名前はまだまだマイナーなんです。「原始林通」にはさまざまな商店やマンションが立ち並んでいますが、それぞれにどんな名前が付けられているか、一軒一軒訪ねてみました。その成果が、下の看板アラカルトの写真です。見ておわかりのとおり、店名やマンション名には「新札幌」・「新さっぽろ」や「厚別」が使われていて、通りに面している建物で「原始林通」を名乗っているところは、厚別原始林通郵便局のほかはありませんでした。

このことについて末廣さんに伺ったところ、「そうなんです。原始林通が付いているのは、うちだけなんですよね。もっと有名になればと思っているんですけどね。」と残念がっていました。全く同感です。そこで「あつ!ベンチャー」としては、みなさんにこう呼びかけたいと思います。道外の友達に郵便を出すときは、原始林通郵便局から出してみませんかと。ただし、郵便局前のポストに投函した場合は、厚別郵便局の取り扱いとなるため、「厚別」の消印が押されます。「厚別原始林通」の消印が押されるのは、窓口で、速達、書留、レターパックなどを出した場合です(今回私がお願いしたのは消印目的の「記念押印」)。出せば、びっくりした友達からすぐに電話やメールが来るはずです。

 ところで、この郵便局、すごいのは名前や消印だけではありません。地域で芸術活動に取り組んでいるみなさんにとって、作品を発表するための貴重なギャラリーでもあるんです。

 郵便局の入り口を入ると奥の壁がすべて展示スペースになっています。4月は進藤ノヱさんの「押し花絵」の作品展が開かれています。花の美しさそのものを表現した作品もあれば、草花を素材として風景画に仕上げたものなど力作14点が展示されています。

 展示は月ごとに変わります。絵画や写真、書、プリザーブドフラワーなど、展示の希望が次々と寄せられていて、今年度分は来年2月を除いてすでに予約で埋まっているとのことです。末廣さんは「地域には本当にすごい創作活動をしている方たちがたくさんいます。そうした方々の作品をお客様にもぜひ見てほしいです。」と話していました。一方、今回作品展を開いている進藤さんも「1か月もの間、無料で展示させてもらえるのは本当にありがたいです。近所の人達にも気軽に足を運んでもらえます。なくてはならない場所です。」と話してくれました。

 こうしたキラリと光る試みが広がっていけば、「原始林通」がメジャーになる日も遠くないかもしれません。

【参考文献】

『道立自然公園野幌森林公園要覧』 北海道野幌森林公園事務所(平成6年3月)

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