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手づくりの灯り 地域を照らす ~あつべつ西紙袋ランターンフェスティバル~

2月1日、その会場は、幻想的な灯りに包まれました。毎年2月、厚別西地区センター隣のさくら公園に数時間だけ出現する光景です。「あつべつ西紙袋ランターンフェスティバル」。ことしもおよそ3000個の紙袋ランターンにろうそくの灯が点され、雪景色を、訪れた人たちの笑顔を照らしました。ランターンの図柄は、地域住民が作った切り絵や、子どもたちが色鉛筆などで描いたものです。会場には地域住民など約800人が訪れました。

イベントはこうして始まった

実行委員会 右は平野眞佐男さん

「紙袋ランターンフェスティバル」は元々滝川市で2003年に始まりました。このイベントを何度も訪れていた厚別西の平野眞佐男さん(66)が、厚別西地区センターの当時の鈴木章子館長に自分で撮った写真などを見せて紹介したのがきっかっけでした。厚別西でもやろうという鈴木さんの呼びかけで住民有志が集まり、滝川市からノウハウを教わったり、実際に見に行ったりしたうえで、2015(平成27)年2月、初めての開催にこぎ着けました。以来、毎年有志で実行委員会を作り、西地区センターが事務局を担って開催してきました。新型コロナのために2年間中止を余儀なくされましたが、おととし復活。ことしは10周年と銘打っての開催となりました。去年の秋から実行委員会を始動させ、紙袋ランターンを作り、約30もの地元企業・団体から協賛金を集め、準備を進めてきたのです。今も実行委員会のメンバーを務める平野さんは「イベントを立ち上げた鈴木さんの思い入れはすごかったし、みんなの力で思っていた以上のイベントになりました」と話しています。

みんなでランターン作り

シニア大学有志

12月16日、西地区センターでは紙袋ランターンづくりが行われていました。この日集まったのはセンターが2022年から始めた「シニア大学」の有志9人です。まずはクリアファイルに綴じられた切り絵の型紙の中から気に入ったものを選びます。花や動物、アニメのキャラクターなどさまざまな図柄があります。デザインが細かくなればなるほどの難易度は上がります。型紙を選んだら、それを色とりどりの紙袋に重ね、型紙と紙袋の両方を図柄に沿ってカッターで切り抜いていきます。第1回の時から作っているという女性は「初めは力の入れ具合が難しかったけど、今は花の図柄にも挑戦しています」と楽しそうに話していました。図柄を切り抜いた後、紙袋の内側にもう1枚白い紙袋を入れれば、図柄がくっきりと浮かび上がり、完成です。

3世代で参加

1月12日には、センターで開かれたフリーマーケットの会場でも製作が行われていました。おばあちゃんとお母さん、お子さんの3世代で参加した家族もいました。おばあちゃんは難易度の高い花柄、4歳の男の子はピカチュウの塗り絵に挑戦です。お母さんが去年フェスティバルを見に来て感動し、ことしは是非作ってみようと参加したといいます。おかあさんは「小さい子から年配者まで参加できて、とてもいいイベントだと思います」と話していました。フェスティバルで飾る紙袋ランターン3000個のうち、2000個はこれまでに使ったものを再利用しますが、1000個は、こうして毎年地域の人たちが、職場やサークル、学校単位で新たに作ります。その労力たるや、頭の下がる思いです。

3000個の灯り

2月1日当日は、穏やかな日差しが降り注ぎ、風もなく、絶好のコンディションとなりました。会場のさくら公園には、前日に実行委員会の人たちがスコップで雪を掘り、散策路を作り上げていました。午後1時、実行委員会のメンバーおよそ50人が西地区センターに集結。丹精込めて作ったランターンを1枚1枚広げ、飛ばないようにひとすくいの雪を詰めて散策路の両側に並べていきました。使われていたのは、取っ手の付いた大きなペットボトルを切って作ったシャベルです。こんな優れもの、誰が思いついたんでしょうね。みなさん手際よく作業を進め、会場は3000個のランターンで埋め尽くされました。そして午後4時半、一斉に灯が点されました。白一色だった公園に光の海が出現しました。

中央は干支のヘビ

実は3000個のランターン、ユニークなデザインに基づいてきちんと並べられているんです。会場隣の地区センターの2階からだと、それがよくわかるというので、上がってみました。すると、星型あり、まる・四角あり、ハート型あり。会場中央でうねっているのはことしの干支のヘビです。10周年を記念した「10」の文字も誇らしげに輝いていました。この会場デザインを毎年担当しているのが実行委員会の半田達夫さん(66)です。「ことしはどんなデザインにしてみんなに喜んでもらおうかと考えるのが楽しいんだ」。そんな半田さんの思いは訪れた人たちにも通じたようです。

半田達夫さん

みんな口々に「きれいだね」と言いながら盛んに写真を撮っていました。自分が作ったランターンを指さしして、お母さんに記念写真を撮ってもらう子どもの姿もあちこちで見かけました。東区から子どもと一緒にやってきた女性は「インスタで知ったんですけど、本当に来た甲斐がありました」と感激していました。本格的なカメラでとても熱心に撮っている人を見かけたので声をかけると、実行委員会が主催している「写真コンテストに応募するために撮っているんです」と言います。優秀な作品は来年のポスターやチラシに採用されるとのこと。それは力が入りますね。知り合いにも出会いました。森林公園パークハウス町内会長の櫻井進さんです。「うちの町内会でも何か冬のイベントをやりたいなあと思って見に来たんです。いいイベントですね。実行委員会の人たちが、指示がなくともスムーズに動いているのも素晴らしい」。このイベント、訪れた人たちのやる気にも火を着けているのかもしれません。

10周年特別企画「スカイランタン」

地区センターのホールでは、10周年を記念した特別企画「スカイランタン」も行われました。白い風船状のランタンの中にはヘリウムガスとLEDが入っていて、ランタンの糸を延ばすと、色とりどりの灯りを放ちながら上がるという仕組みです。北門信用金庫(本店・滝川市)の助成を受けて実現しました。ホールの中は照明が消され、夜空のような空間に色鮮やかなランタンがふわふわと浮かび上がりました。事前に応募した80人あまりの親子などが、思い思いの絵を描いたランタンを上げ、もう一つの光のショーに見とれていました。

2時間半の光のショー

フェスティバルは、地区センター屋上からの花火の打ち上げで最高潮に達し、午後7時にフィナーレを迎えました。会場のデザインを担当した半田さんはにこやかでした。「これまでで最高のコンディションだったね。ランターン作りから何から、地元の企業・団体含めて地域ぐるみでやってるからね。団結力あるよね。あと10年はやりたいね」。あと10年ですか?ご謙遜を。まだまだ続くと思いますよ。何か月も準備して2時間半とは、ちょっともったいない感じもしました。降り積もった雪も温かく感じられるような、手づくり感いっぱいのいいイベントでした。

実行委員会メンバーの記念撮影

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