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どうして「まんまる」なの? ~「まんまる新聞」のすべて~

2024年11月20日(水) BiViパーク

【ゲストスピーカー】くらしの新聞社 石鳥哲さん

プロフィール                                       1958(昭和33)年 札幌市生まれ。札幌市内の新聞販売店勤務などを経て2013(平成25)年、くらしの新聞社入社。現在、統括部長。

まんまる新聞の歴史

まんまる新聞は1964(昭和39)年、東京オリンピックが開催された年に「団地新聞グリーンタウン」として創刊されました。タブロイド版で、発行部数は1万8000部。札幌市中央区にあった「北海道団地新聞社」が月2回発行していました。厚別区のひばりが丘団地や南区、東区など札幌市内の団地のほか、江別や小樽などの団地にも配っていました。当時は、うちの配達員が直接配るのではなく、北海道新聞に頼んで、新聞に折り込む形で配っていました。「ママと子どもの新聞」をめざして、各団地の自治会、婦人会活動、スポンサーの催し物まで幅広く伝えたいとしていました。団地がどんどん増えていく中で、こういう情報紙があるのはいいことだと言われていたようです。

その後、経営者も代わり、会社も「くらしの新聞社」に代わりました。「グリーンタウン」という名前は引き継がれましたが、配布エリアは大きな団地が建った厚別、江別、真駒内に集約されました。さらに、2004(平成16)年10月にリニューアルのため一旦休刊し、1か月後に創刊準備号を出して「まんまる新聞」という名前で出しますよと明らかにしました。それまでのように北海道新聞に折り込みをお願いするのではなくて、自分たちで配布エリアの全戸に配ることになり、配達員を募集しました。配布エリアも真駒内はやめて、これからまだまだ伸びると見込んだ厚別と江別に集約しました。ただ、準備号を清田区の平岡公園東にも間違って配ってしまったため、今も平岡公園東には配っています。準備号から1か月後の12月3日に大幅にリニューアルした「グリーンタウン まんまる新聞」を出しました。この時の部数は9万1400部でした。タブロイド版から、北海道新聞などと同じブランケット版になりました。カラーにしたのは、その1年後、2005(平成17)年11月25日号からです。

このニューアルで、新聞の名前も、配布エリアも、配布方法も全部変えたので、相当大変だったと聞いています。配達員を募集したところ、200人以上が応募してくれて、事務所の前に面接の人たちの列ができたということです。

今は配達員が320人います。18歳から、最高齢は86歳までいますが、50~70代が中心です。リニューアルから20年になりますが、その時からずっと配達員をしてくれている人も何人もいます。当日都合が悪くて配れないという人が出たら、近くを配っている人にお願いし、それでもだめだったら、私たちが配ります。11万5000部配りますということで広告をいただいているので、配れないところがないようにしています。応募してきた人に聞くと、他の新聞だと朝は早いし、毎日やるのは無理だと。うちは毎週木曜日が基本で、朝4時から夜8時まで自由に自分の用事を足しながらでも配っていいことになっています。所要時間も2時間から2時間半の区域が多いので、朝1時間だけ配って、夕方残りを配るということもできます。

「まんまる」の由来

なぜ、「まんまる新聞」という名前なのかですが、名付けた前社長によると、江戸時代の木喰(もくじき)という僧侶の作った仏像に由来するということでした。木喰の仏像は顔も目も口もみんな円い感じなんです。「世の中が争いもなく、まんまるであればいいね」ということで付けたということでした。みんなにすぐ覚えてもらえたものプラスでした。新さっぽろ駅付近の今回の再開発エリアの愛称も「マールク新さっぽろ」であることについては「ああ同じだな」という感じがしました。

リニューアルしても、編集方針は変わりませんでした。いろんな催し物の情報を載せようということでやっています。家にいないで、外に出ましょう、出れば元気になるだろうということです。「まんまる新聞を見てから、翌週の行動を決めるんです」という方もいて、それだけ読んでもらっているんだなあと思っています。

2019(令和1)年11月。「くらしの新聞社」は、旭川の「ライナーネットワーク」という会社の子会社になりました。「ライナーネットワーク」は、創業が1984(昭和59)年で、フリーペーパーの「ライナー」を出しています。旭川だけじゃなく、美瑛とか当麻などでも配っています。発行部数は17万部、「まんまる」と同じブランケット版で、8~16ページ、週2回配っています。配達員は700人近くいます。子会社になった後も、うちはうちで独自に作っています。今は1・2か月に1回、お互いにいろんな話題について協議したり、情報交換をしています。この間も「ライナー」のスタッフが来てくれて、うちのシステムもいろいろ変えていかなきゃいけないとアドバイスしてもらいました。遠いようで近いというか。「ライナー」はとてもおもしろいことをやってきています。それをいかに「まんまる新聞」に取り入れられるかということで、協議しながらやっています。

新聞は発行する週の前の週のうちに作らなければならないんです。広告や、みなさんからいただいた催し物の記事を編集して、発行の前の週の金曜日夕方には印刷会社にデータを送ります。翌週、発行する週の月曜日の午前中に印刷会社から納品になって、月火水の3日間でチラシを折り込む作業をします。水曜日の夕方には各配達員さんのところに配送業者を使ってお届けをしています。配達員さんには木曜日もしくは金曜日に配っていただいています。配達員の都合に合わせて、木曜の朝4時から金曜までに配布してもらっています。

発行の2週間ぐらい前までに、記事を書いておいて、依頼してきた人に「これでいいですか」と内容を確認たりします。このやりとりに1週間ぐらいかかる可能性があるので、記事を載せたいという時は、遅くとも発行の2週間ぐらい前までには情報をいただきたいです。早い分には全然問題ありません。広告が中心なので、記事が載らなかったり、ちょっと短くなったりというのはご容赦いただいています。

「まんまる新聞」は年間で3回しか休みがありません。5月の大型連休の時と、8月のお盆の時と、年末年始のどちらかで1回です。

製作態勢

社員は全部で11人で、広告を取ったりする営業が5人。紙面を作るのは2人態勢でやっています水曜日ぐらいから校正をかけて、違ってるところや整合性がないところはまた確認するということになります。今は4ページが多いんですけど、6ページ、8ページになった時はすごい量になってくるので、作業的にもきつい時もあります。

チラシの折り込みは、20年やっている人は1時間に1500部ぐらいは入れます。ベテランでは2000部ぐらいできる人もいます。新しく入った方は1時間に500とかで、ちょっと経つと800ぐらいまでにはなります。チラシを折り込むパートさんが8名います。月曜日から始めて水曜に配送業者さんが来るまでには終了しなければなりません。週によってチラシの枚数も違っていて、私たちが手伝うこともあります。

紙面の構成ですが、今4面でやっています。まずみなさんに読んでほしいという記事は1面に載せます。2面には医療関係、健康セミナー。3面は求人広告がほとんどを占めることが多いです。4面は飲食店とか楽しめるいろいろなイベントなどを持ってくることが多いです。広告が多くなったときは、ページ数を増やして、記事もより多く掲載できるようになります。

みなさんも特集をご覧になったことがあると思うんですけど、パンや、焼き肉の特集もやっていますし、前回初めてコーヒーの特集もやりました。スイーツ、介護、住宅、終活と、いろんなジャンルの特集をやり、みなさんに喜んでいただいています。読者の方にも、「まんまる新聞 変わったね」と言われます。「ライナー」はこういう企画をもっとやっているので、ノウハウをもらって少しずつやり出したということです。小さい企画でもいいから続けられるように努力しています。求人欄は、今はいくつかフォーマットを作っていて、気軽に求人広告を出してもらえるようになっています。チラシについては、厚別中央、西、東と、エリアを分けて受けています。最初に全域に求人広告のチラシを入れて、何人か集まったら、あとは近くのエリアだけにチラシを入れるという形で利用しているケースも多いです。

今後の目標としては、読者投稿欄で相互にやりとりしたいし、求人広告がもうちょっとほしい。配達エリアも拡大したいです。「なんでうちには配られないの」と言われます。特に平岡公園は「平岡公園東に配っておいて、なんでうちに配られないの」と結構言われます。岩見沢も「幌向の駅に置いてあるので駅まで取りに行けばいいんだけど、できれば配ってくれないか」とおっしゃる方もいます。「ライナー」では会社主催のイベントもやっているので、うちもそれができればいいなという思いもあります。

来場していた「くらしの新聞社」安井清吉社長(写真中央)

2020年に先代の社長さんが病気になられて、たまたま同じ業種として交流があったので、私の会社に引き継いでほしいということでした。私が社長をしてきた「ライナー」は息子に事業承継して、今は「くらしの新聞社」の社長をやっています。とにかく地域に愛される新聞、あって当たり前、なくては困るという情報インフラになりたいと思っています。さらにいろんなお客さんや住民の方々とつながって、できれば双方向な紙面であったらいいと思っています。どんどん投稿があったり、意見交換があったり、読者の声が紙面に反映される双方向の情報紙になるといい。地域のいろいろなことに着目して、そこから仕事起こしになるような媒体になるといいよねと日々話しながら、少しずつ前進しています。これからもよろしくお願いします。

【質疑・意見】

Q:厚別について、もっとこうなればいいのにと思われる点はありますか。

石鳥:イベントをやりたいんだけど、開催する場所があんまりないというのはよく言われます。江別はえぽあホールや公民館があるんで、結構開催しやすい。この間も厚別で開催したいけどできないから、えぽあホールを借りたと話していた方がいました。その辺のハードルが高いのかなあと思います。新聞を見ればわかるとおり、やっぱり江別の情報が多い、偏ってしまうことが多いんです。1面については江別・厚別を均等に載せようと、いろんな情報集めたりしています。でも、全体を見ると「江別が多いよね」と言われることも結構多いです。やりたくてもできない状況を打破できればいいとは思っています。厚別の情報はいっぱい欲しいし、ネットで調べておもしろそうだなと思ったら主催者に連絡して、「まんまる新聞に載せてもいいですか」と調整したりしています。

Q:配達エリアを広げると、広告収入の増加につながるんでしょうか。

石鳥:配達エリアを増やすことによって、そのエリアの広告が多くなると考えています。今も白石など近隣のところには営業に行っています。でも、「載せたいんだけど、こっちには配られないんだよね」ということで載せてくれない広告主の方もいらっしゃいます。配ることによって広告を獲得できる可能性は高くなると思います。どんどんエリアを広げていかないと、広告主もこっちを向いてくれない。計画を立てながら少しずつ増やして行ければと思います。

Q:ネット展開に力を入れていくという考えはいかがですか。

石鳥:「ライナー」はネットがすごく進んでいるので、今それをひとつひとつ勉強しながらやってきています。ネットも同時並行でやっていく必要があると思っています。

Q:イベントの当日に取材に来て、それを記事にしてくれないかというニーズもあると思いますがどうですか。

石鳥:確かにあります。ただ編集方針として、これからのイベントを主体に載せたいと思っています。本当にスペースがあるときには、取材をさせてもらうことはありますし、地域の活性化のためになるのであれば厭いませんが、終わったことより、これから出かけて行けることを載せたいと思っています。

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