2024年10月16日(水) BiViパーク
【パネリスト】
・厚別区民協議会代表・厚別中央町内会連合会会長 田中昭夫さん
・北星学園大学社会連携課 鹿熊裕志さん
・ 〃 経済学部4年 柳瀬里梨さん
・札幌学院大学社会連携課 濱田 光さん
・ 〃 経済経営学部4年 川村優太さん
・厚別区地域振興課 古関 仁さん
(司会)あつ!ベンチャーフォーラム 山本健一(やまもとけんいち)
学まちネットの仕組み
山本 きょうは地域と学生の連携を進め、地域を活性化させようというシステム「学まちネット」について考えます。初めに「学まちネット」の仕組みについて、これを作った厚別区地域振興課の古関さんに説明していただきます。
古関 学まちネットの正式名称は「学生まちづくり促進ネットワーク」です。行事の企画運営に学生の参加を希望する地域と、地域のまちづくり活動に参加してみたいという学生をマッチングさせる仕組みです。基本的な考え方として、学生の学びや成長につながるものにしていく、学業や学校生活に支障がないように配慮し、交通費などは主催者側が負担することになっています。具体的な仕組みとしては、学生にまちづくり活動に参加してほしいという希望があったら、「まちづくり活動参加希望シート」に、事業の内容や学生にお願いする活動内容、募集人数などを書いて、活動内容の資料と一緒に、まちづくりセンターに提出してもらいます。その情報をもとに地域振興課で、オンラインで申請できる申請フォームを作成して、そのURLと資料を地域振興課から区内の北星学園大学、札幌学院大学、札幌看護医療専門学校にメールで送付します。この情報を各学校から学生に周知してもらい、学生が参加してみたいと思ったらURLから申請フォームにアクセスして、応募してもらうという流れになっています。学まちネットは厚別区独自の仕組みなので、市役所内でも「どんなふうにやっているの」と聞かれたりしています。
学まちネット開設の経緯
田中 町内会は会員が高齢化し、活動の担い手がなかなかいないということで、盆踊りや祭りなどができないという状況になってきています。何とかこれを打開しないといけないということは、区民協議会で長い間話をして来ました。そんな中、今回の再開発で、札幌学院大学、札幌看護医療専門学校が新さっぽろにキャンパスを開設しました。北星学園大学とは以前から厚別区が協定を結んで学生さんにいろんな形で厚別区のまちづくりに参加していただいていました。今回3校になったということで、きちんとシステム化して、まちづくりに協力していただけないかということで話し合った結果、厚別区がこのようなシステムをまとめてくれたわけです。
鹿熊 大学はコロナの2年間授業もオンラインで、ボランティアサークルなども実際には活動できないような状況が続いていました。ですからこの話自体は渡りに舟と言うか、学生さんが社会に出ていろんな経験を積んでもらういい機会だと思ったんです。それに、厚別区さんが間に入ってくれる、札幌市さんの方で、学生が活動中に何かのケガをした場合に包括的に解決してくれるボランティア保険にちゃんと入った上で話を持って来てくれたので、私たちとしても話に乗りやすかったんです。
濱田 札幌学院大学の新札幌キャンパスは2021年に開設されましたが、それ以前は江別キャンパスを拠点にいろいろ活動していました。江別市では「ジモガク」という江別の4大学の学生を対象に、ボランティアやインターンシップを紹介する仕組みがあって、学生がそこに参加していました。新札幌に移転してすぐにこうしたお話をいただけたのはすごく光栄なことだと思っています。本学の場合は、今年度の4月から、学まちネットで30時間以上活動し、申請、活動報告をすると1単位もらえることにしました。学生にも多く参加してもらっているので、本当にありがたく思っています。
これまでの利用状況と評価
古関 昨年度の実績としては、町内会や地域団体から27件のお申し込みをいただき、のべ165名の学生のみなさんに応募していただきました。今年度については、10月1日時点で16件の申し込みをいただいていまして、のべ118名の学生のみなさんに応募していただいています。4月から9月までの申請件数や応募人数は昨年度の方が多いんですけれども、ことしも順調に活用していただいているかなあと思っています。初めはどれぐらい地域の人から募集があるだろうか、どれぐらいの学生が応募してくれるだろうかと不安がありましたが、初年度からたくさんの募集、応募をいただいていると思っています。
田中 私の町内会は厚別中央振興会という町内会で、実は会員世帯数が5500世帯というマンモス町内会ですが、おそらく年間7・8件ぐらい使わせていただいていて、非常に助かっています。
川村 私はふれあい広場で開かれた子どもまつりに参加させていただきました。ヨーヨーを作ることになった時に、達人のおばあちゃんが10秒足らずで作ったので、私も余裕かなと思ったんですけど、空気と水をいっぱい入れたら爆発して、おばあちゃんを濡らしてしまったんです。でも、おばあちゃんは優しく「大丈夫?」と心配してくれました。みんなで楽しくできた、地域の人と交流を深めて子どもまつりを成功させたというのは、いい思い出です。
柳瀬 私は大学入学で札幌に来ましたが、コロナ禍の中だったので、どうやって地域の方とつながれるのかわからなくて、とりあえず大学のボランティア部で活動していました。でも、学生だけだと地域の人とつながる活動が大変だったので、町内会とつなげてくれるネットワークの存在を知った時はすごくありがたく感じました。昨年8月に学校近くのマンションの町内会のスマートフォン教室に参加しました。お年寄りにスマートフォンの簡単な操作、たとえば札幌市の防災情報をどうやって確認できるかを一緒にやってみるだけでも、すごく感謝してもらえたので、とてもいい経験になったと思っています。
濱田 大学では学まちネットで参加した学生に、満足度や参加した理由、今後どういった活動に参加したいかという質問を設けてアンケートを採っていますが、非常に満足度が高いです。自分が感謝されたり、社会の役に立っているという充実感が得られたりするんだろうと思います。公務員を目指している学生も多く参加していて、地域の課題を自分の目で見て知るうえで、大いに役立っているのではと思っています。
鹿熊 うちもアンケートを採っています。一番の理由は、参加した学生さんが本当はどう思っているのか聞くことです。匿名なので、正直予想外だったことや、ここはもっとこうしてほしかったということも書きやすくしてあります。本音の部分でこんなはずじゃなかったという声も正直ありました。そういう意見を元に、次はどんな活動をしていけばいいのかを練っていけばいいのかなあと思っています。満足度を5段階評価で採っていますが、平均すると3点以上なので、この活動自体はうまく回っているのかなあと思っています。
学まちネットをよりよいものにするために
田中 この仕組みをまだわかっていない町内会が大部分という感じがします。もっと知って活用してもらうことが大事だと思っています。せっかくこういう機会をいただいたわけですから、若い人たちの考え方を聞き、もっともっと若い人と接触しながら地域活動を広げていってほしいと思っています。
古関 知って使ってもらえるように、周知・広報を含めて区の中でこれから検討できたらと思います。
柳瀬 これからの工夫としては、実際に参加した学生や町内会、区役所の方に、学校に来てもらって、学まちネットでやっている活動内容や、「すごくいい経験になった」「参加してくれてありがとう」といった思いを伝えるトークイベントを開くと、もっと参加者が増えるのではないかと思います。ボランティアをやりたいけど、やったことがないからわからないとか、少し不安に思っている人もいると思うので、実際に参加した学生の声を聞いてもらうことによって、後押しできるのではないかと思います。
川村 うちの大学でも学まちネット自体を知らない人はいっぱいいて、大学の情報ポータルで宣伝しても見ない人もいっぱいいるので、SNSで活動の動画を配信したりすれば、もっと参加したり興味をもつ人たちが増えるのではないかと思います。
鹿熊 町内会さんからのフィードバック、私たちからのフィードバックが、うまくクロスして情報を共有することころまでは、まだ至ってないというところが、今後工夫すべき点だと思います。
濱田 子ども食堂など子どもとかかわるような活動は非常に人気で、すぐ埋まってしまいます。そういった学生のニーズと合った活動がもう少し増えていけばと思います。また、アルバイトやサークルで忙しくて時間がない学生も多いので、そういう学生でも隙間時間に参加できるような活動ももう少し増えればとも感じています。
古関 企画段階から参加することが学生のみなさんの学びにつながると思っています。例年2月に開催している新さっぽろ冬まつりでは、学まちネットを通じて募集を行い、8月から学生さんに企画会議に参加していただいています。
【会場からの意見】
信濃小学校親父の会 宮川智嘉さん
子ども食堂の事務局や町内会の役員もやっています。子ども食堂は本当に募集して1時間ぐらいで埋まっています。こういうちゃんとしたシステムができて、人が来てくれるっていうのはすごくありがたいです。我々としてもお願いするからには、できるだけ学生さんの気持ちを汲んでいきたいと思っています。学生さんたちにとっていい勉強になっているか、いつも迷いながら活動しています。もし企画段階から関わってもらえるのであれば、もっとみなさんの若い意見を取り入れて活動できるかなと考えています。ただ、我々のような小さな団体がそうしたお願いをした時に、本当に来てくれるだろうかという心配があるんですけど。
柳瀬 きっと参加したいと言ってくれる学生もいると思います。私が参加してきた子ども食堂でも、食べるだけじゃなくて、宿題を一緒にやろうとか、夏のちょっとしたお祭りで射的を作って子どもたちに楽しんでもらうとか、学生が考えてやってきました。
川村 そういう貴重な体験は今しかできないので、やりたい人もいっぱいいると思います。
札幌学院大学傾聴ボランティアサークルLisの会代表 藤田那大さん
ボランティアの需要はすごい高いと思います。私も傾聴ボランティアサークルですが、ボランティアサークルは何個もあって、結構会員数も多いんです。SNSの動画だと結構見られるし、活動の雰囲気も伝わりやすいでので、活用してみたらいいと思います。学まちネットの方に学校に来ていただいて、説明会を開くのもいいかもしれません。
青葉まちづくりセンター所長 星野清統さん
青葉まちセンでも、人数は多くはないものの、企画段階から学生に参加いただき、やりたいことにチャレンジしてもらうということもやっています。イベントだけではなく、学生さんが町内会の組織の一部にしっかり入るとか、本当の意味でまちづくりの担い手として入ってくるようになると、もっと意義のあるものになるのではないかと思います。来ていただく我々ももっと努力しなくてはならないと思っています。
山本 この仕組みがよりよいものになって地域の活性化につながればと思います。きょうはありがとうございました。